コラボ Collab
2025.02.10
著名クリエイターとともに、新たなものづくりに挑戦!(第3回)

「えどコレ!」選定事業者と、第一線で活躍するクリエイターがタッグを組んで新商品開発に取り組むコラボレーション企画シリーズ・第3回。今回は、それぞれの事業者が腕によりをかけて制作した、「えどコレ!」オリジナルアイテムの試作品がさらにブラッシュアップされました。その仕上がりはいかに。
本格的に冷え込んだ、晴れた冬の朝。「無印良品 銀座」の柳俊輔さんと中河拓夢さんが江戸川区を訪れるのも3度目です。前回までの打ち合わせを経て出来上がった、オリジナルアイテムの試作品の確認のために、3事業者を訪問します。
ともに企画を進める江戸川区の3事業者は「へら絞り」の髙橋鉸工業さん、「しめ縄」の縄忠さん、「江戸風鈴」の篠原風鈴本舗さん。商品完成間近とあって、どんなアイテムにお目にかかれるのかと、二人は胸をおどらせていました。
最初の訪問先は髙橋鉸工業。アイデアマン・髙橋社長は、全員が集まるなり、最近つくった新製品をはつらつとした表情で紹介してくれました。そんな和気あいあいとした空気のなか、髙橋社長が満を辞して取り出したのが、こちら!

髙橋鉸工業の巧みなへら絞り加工により生まれたドッグボウル。洗練されたインダストリアルなデザインがおしゃれ。銅板のネームプレート付き。
絞りの技術がいかんなく発揮された、大小2種のドッグボウル。スタイリッシュかつ重厚感のある姿に歓声があがります。
「この薄さに仕上げるのがなかなか難しかったですが、何とか仕上げました! R加工(注:角を丸くする加工)の美しさが自慢です」と嬉しそうに話す髙橋さん。
柳さんと中河さんも「バッチリ!」「めちゃめちゃ格好いいです!」と手に取ったドッグボウルをまじまじと見つめます。

手に取ると、ずっしりとした重みが。「ワンちゃんが勢いよくご飯を食べても大丈夫!」と髙橋さん。
ボウルの外側につけられた銅板のネームプレートは、使い込んでいくうちに錆びてきますが、その経年変化と共に愛犬と暮らした時間の長さを感じられるといいます。

「銅板プレートは愛着をもって長く使ってもらえる仕掛けです。最近では『経年優化』と表現する人もいますね」(髙橋さん)
完成度の高さに、一同感銘を受けた様子。それでも、ボウルの深さなど、さらなる改善点がないか活発に議論が交わされました。

ネームプレートは職人が一つずつ磨き上げます。
デザインしたものが形になったことを喜ぶ中河さん。その様子を見た髙橋社長も「ものづくりは、お客さんが思い描いたものを実現できた時が本当に嬉しいですね」と満ち足りた表情でした。

満面の笑顔の髙橋社長(中央)。ドッグボウルの完成度の高さに、柳さん(左)と中河さん(右)も大満足。
続いて縄忠へ。首代光信さんが、オリジナルのしめ縄飾り制作キットを披露してくれました。

細締めと装飾用の稲穂に、飾りつけに使える紐付きのセット。
「季節のお花を一緒に飾ったり、オーナメントを組み合わせたり。好きなようにデコレーションを楽しんでほしいですね」と柳さん。
今回のコンセプトは、自宅で気軽にアート感覚で飾れる、おしゃれなしめ縄。「神棚がなくても大丈夫です。しめ縄を飾りとして自由自在にアレンジして楽しんでもらいたい。そんな想いを込めて、商品タイトルも『自在』にしようと思います」首代さんも話します。

キットの内容を、実際にパッケージに入れる首代さん。
今回でキットの内容が固まったので、さらにパッケージの台紙や説明書きなど、細かい点を詰めていきます。中河さんが持参した何色もの紙を見比べ、台紙は「栗色」に。台紙に記載する説明書きや注意事項、商品名のロゴシールなどを決めていくと、店頭に並ぶ際の商品イメージが膨らんできました。

サンプルを使って実際に作成したしめ縄飾りのイメージ写真を共有する中河さん(右)。どんな飾り方ができるか、社内で何度も検討したそう。

飾り方の一例。稲穂と一緒に結んだ輪となびくしめ縄の先端部分がポイントです。濡らして曲げて乾かせば、角度やクセをつけることも。
飾り方を少し変えるだけで、飾る場所を選ばないモダンな印象になる「自在」。正月飾りや神事の印象の強いしめ縄ですが、作法を気にせず、しめ縄文化に触れられるキットに仕上がりました!


完成したしめ縄飾りと一緒に店頭で記念撮影。
最後に向かったのは、篠原風鈴本舗。
前回の訪問では、魔除けの用途で使われていた風鈴を再現する朱色に「シダレヤナギ」と「ガス灯」という、銀座の風景を思わせるイメージが固まりました。今回は、風鈴のデザインの最終確認と短冊やパッケージの詳細について打ち合わせます。
「昔、銀座周辺は海でした。潮風が吹くのであまり木々が育たないなか、柳の木だけは元気に育っていたようです」と、柳さん。
商品の名前は『銀座の柳とガス灯』に決定です!

完成した『銀座の柳とガス灯』
風鈴本体に付ける短冊も、オリジナルのものをつくります。中河さんが持参した画用紙を比較しながら、サンプルの風鈴に合う色や大きさを探します。

パッケージのイラスト案を持参した柳さん。
「短冊の大きさに決まりはありません。大きさや重さによって、音の鳴りやすさが変わります。風の強さや、どのくらい音が鳴ってほしいかに応じて紙の大きさを調整してもいいんですよ」(篠原さん)

風鈴に付ける短冊の大きさや紙質を篠原さん(右)と一緒に選びます。。
現代では、カーテンレールなど風通しのよい場所に飾られることの多い風鈴ですが、篠原風鈴本舗には風鈴専用のスタンドもあります。
静岡の竹細工工房に特注している竹製の箱型スタンドに風鈴を飾ると、見る角度によって格子の隙間から赤い風鈴のシルエットが浮かび上がります、
「スタンドも一緒に店頭に置いたら、自宅に飾るイメージがわく人も多いと思います」(中河さん)

篠原風鈴本舗オリジナルの風鈴スタンド。格子を背景にしても、前景にして格子越しに見ても美しい。
商品の打ち合わせを終え、「笛吹き」技法による風鈴作りを改めて見学させていただきました。職人によって丁寧に仕上げられる風鈴は、一つひとつ音程に違いがあり、個性的です。

ガラスを吹いて膨らませる「笛吹き」技法。ガラスの温度は1300度もの高温。

風鈴のデザインには、さらに磨きがかかる予定です。。
コラボ商品開発の道のりも、いよいよ最終段階へ。いったいどのようなパッケージで店頭に並ぶのか、期待が高まります。
次回はついに完成品が店頭に並びます。2月12日から始まるギフトショーをお楽しみに!
Writing 加藤由梨
Photo 伊藤智美